(聞き手)
みやぎ復興パークの今後の課題などについて、ご意見をお聞かせください。
(井口様)
みやぎ復興パークから世界に羽ばたく企業と研究結果を輩出して、日本を再度、科学技術立国にするようなものを発信してもらいたいというのが今後の課題です。将来的には、
みやぎ復興パークにいる企業が新しい技術を導入・確立して卒業していかれるのでしょうが、ここから出た企業がごく一部でもいいので、多賀城市に立地して頂きたいというのが私の思いです。
国からはCOC(地(知)の拠点整備事業)やCOI STREAM(革新的イノベーション創出プログラム)というプログラムが打ち出され、
地域イノベーションに力を入れています。
COCでは、宮城教育大学が拠点の一つとして採択されました。
地域イノベーションをするためには。もちろん国の政策が必要ですが、今は東京に色々と一極集中し過ぎているように感じています。
宮城には、ベガルタ仙台や楽天が出来ました。さらに、楽天は優勝をして、地域がイノベーティブに、革新的になってきています。
これは地域だけを革新させるという意味に留まりません。
震災時はトヨタの会社で生産が出来なくなりましたが、それも被災地から部品を仕入れていたからです。
地域立地型にしていかないとリスクマネジメントが出来ないという事は、今後、非常に大きな問題になってくる事でしょう。もし東京直下型地震が来たら、あるいは富士山が噴火するなどしたら東京は大変なことになってしまいます。ですから、そのリスクを軽減する方法が必要になります。
東京には東北出身者が多くいると思いますが、東北の介護施設に戻って来たいという声はほとんど聞かず、四国や九州に行きたいという声を聞きます。
東北の地域は全体的に魅力があると思いますので、それを、住民や若い人にどのように伝えるかが問題になります。その点では、福島の原発問題が大きな足かせになってしまっているのでしょう。
東日本大震災で起きた不幸な出来事を、将来に渡って良い方向に持って行くためには、学んだ事をしっかりまとめて、日本や世界に向けて発信していく事が最も重要になると思っています。
中でも多賀城市は、日本の
歴史において、古代東北の中心でした。
すなわち、文化の地でもありましたので、これを取り戻したら良いでしょう。
歴史から学ぶ事で、東北はもっと自信を持つ事が出来ます。
この国は決して、文化が果てる国などではありません。そのためにも、若い方に自信を持って頂く必要があります。
宮城県には青葉区、太白区、大衡村などに、6つの少年少女発明クラブがあります。
ですが、多賀城市や塩釜市には発明クラブはありません。
被災地域に、子どもたちから物作りを考えていく場と機会があった方が良いと思っています。ここで成果をどんどん挙げておかなければいけません。
今回の震災の件で、東北大学の先生方は震災が起こる確率がどんどん上がっているとおっしゃります。
ですから、私はそれを信じて、地震保険に入ったり、家を耐震構造に作り直したりしました。
災害は来てほしくありませんが、「備えあれば憂いなし」と思っております。
そして、科学技術は万能ではないとも言えます。私は以前、製鉄会社で働いていた事がありました。
その工場のラインで不具合が起き、熱された鉄が動かなくなってしまった事がありましたが、その時の工場長の経験で、見事不具合を解消出来たという事がありました。このような対処法は、経験や
歴史に学ばなければいけません。
今は何でもコンピューターやAIで処理してしまいますが、もし入力したデータに不具合があればうまくいきません。
さらに、データに不具合がなくても、AIの想定範囲を超えたような条件が起きた時に、やはりおかしくなってしまいます。
今回の震災についても、想定外という言葉をあまり言ってはいけません。
私を含め、想定出来る知識がなかったという事を、改めて考えて頂きたいと思います。